1917の副題に秘められた"4つの命"の意味

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惜しくもパラサイトによって

作品賞は逃したものの

日本でも大きな話題性を呼び、

2月14日についに日本上陸を果たした

「1917 命をかけた伝令」

 

副題である

「命をかけた伝令」が

意外にも国内で賛否両論を呼んでいる。

 

確かに作品の内容としては

緊張感を削ぐような言い回しである

この副題。

 

しかしながらこの

「命をかけた伝令」。

果たして

彼ら2人の命がけの伝令という

意味だけで解釈していいものなのか。

 

この副題

「命をかけた伝令」に

注目し、

今作で描かれた「命」の形を

考察してみたい。

 

 

 

本記事には

本作のネタバレが含まれています。

 

1.戦場に散らばるいくつもの命と主人公2人の命

 

命をかけた伝令という副題から

一番初めに思い浮かぶであろう

命の形が

戦場に散らばる無数の命であり、

彼ら自身の伝令が命がけの指令である事を

裏付けるもの。

言い換えるならば"命がけの伝令"。

 

無論、本作を鑑賞すればわかるように

本編中の至る所に

戦場に散らばる"元々命だったもの"の存在。

兵士だけでなく馬や草木。

戦場ではそれらの亡骸が散らばる様子が

常に映像に映し出されていると同時に

彼ら主人公2人もまた

いつその"元々命だったもの"に

変わり果てて、

地べたに転がってしまうか分からないという

恐怖感と緊迫感が本編を通して

付随し続ける。

事実、彼らの命2人を脅かす

ブービートラップや狙撃が描かれ、

事実、

ブレイクは道中その散らばる亡骸のひとつに

姿を変えてしまう。

 

いつ自分の命がそこに散らばるか分からない

命がけの指令を写しだす本編だけに

命をかけた伝令という副題からは

誰もが彼ら2人の命をかけた伝令である

と推測すると思われる。

 

 

 

2.主人公2人の伝令にかかる1600人の命

 

本作の副題を

主人公2人の命をかけた伝令とみる以外に

2人の伝令にかけられた1600人の命と

考察することもできる。

こちらは言い換えるならば

いわば命がかかった伝令。

 

本編の内容にもあるように

本作は独軍の撤退作戦による罠に

まんまとハマっていままさに追撃を

始め、敵の懐に飛び込もうとする

マッケンジー大佐の部隊に

独軍の罠であることを伝え、

1600人の命を救うという指令を

帯びた2人の物語である。

この1600人の中には

ブレイクの兄も含まれており、

彼が率先して伝令任務を遂行しようとする

引き金にもなっている。

(彼が兄と再会することは叶わなかったが)

 

つまりこの伝令は

主人公2人の命がけの指令であるとともに

敵の罠にいままさにハマらんとする

1600人の命がかかった伝令でもあったのである。

 

こうして副題を捕らえると

命をかけた伝令は

主人公2人の命以外に

ブレイクの兄を含めた

1600もの生死をかけた

伝令であったことがわかる。

 

主人公2人の命がけの伝令には

1600もの命が重く重く

のしかかっていたのである。

彼ら2人は1600もの命を

その小さな背中に背負い、

戦場を駆け抜けた。

 

 

3.苛烈な戦場で儚く美しく輝きを増す命

 

 

本作が映し出す命の形は

全てが戦場で無残に散らばる命や

いつなくなるかわからない危うい命

だけではない。

 

当たり前が当たり前でなくなる

苛烈な戦場に置いてこそ

強く、美しさを増して輝く命がある。

 

本作で印象的に描かれた

強く、美しい命の形に

独軍に占拠された街でスコフィールドが

出会う赤ん坊。

川の激流に飲まれたスコフィールドの

前に散らばる白い花びら。

砲弾飛び交う最前線の地に咲く花。

がある。

 

普段は当たり前に日常に付随する

草木や小さな命は

それらが当たり前に奪われて

無数に亡骸として散らばる

苛烈な戦場においてこそ、

より強く、美しく、輝きを増す。

この作品を鑑賞した方ならきっと

印象に残っているシーンのひとつだと思う。

 

命を終えようとするもの達の中にあって

強く輝きを増す

いまから人生を歩み始めようとする

幼子の姿。

 

最前線で敵の砲弾飛び交う中に

死にに向かう兵士達の足元に

強く根をはる白い花達。

 

数えきれない亡骸が浮かぶ川で

印象的にスコフィールドを包む白い花びら。

 

対照的な命の形が

いくつも描写されているのが

本作の大きな魅力のひとつである。

その命はどれも儚く、切なげでありながら

強く美しく輝きを増し、

常に死を近くに感じながら、

ブレイクを失い、

孤独になったスコフィールドに

生きる希望を与え続け、

命の美しさ、強さを説き続ける。

 

苛烈な戦場の中で

息づくいくつもの

強く美しい命は

いくつもの死を感じ続ける

鑑賞者とスコフィールドに

生きる希望を与え、

生きろ。と説き続ける。

これが本作のキャッチコピー

"生きろ"になっているのである。

 

4.スコフィールドが届けるブレイクの命の証

 

本作でもうひとつ、

スコフィールドに大きくのしかかった命。

それは物語中で命を落としてしまう

ブレイクの命である。

 

本作において、

ブレイクがこの指令を

積極的に引き受ける理由のひとつに

縦長に伸びきった戦場の最前線にいる

兄の安否を確かめに行くこと、

その兄に自らの生存を伝令することがある。

 

彼にとってこの伝令は

戦場の最前線に敵の作戦展開と

自らの命の二つを届ける意味が

あった。

 

そんな彼は道中、思わね出来事で

非業の死を遂げる。

彼の兄へ向けた命の伝令は

スコフィールドに託される形となった。

 

スコフィールドにとって

この伝令は

彼の兄へ"彼の死"を伝える

命の伝令となった。

 

スコフィールドには

道中、非業の死を遂げた

ブレイクの命の伝令が

のしかかる事になったのである。

 

 

 

こうして彼が

本作の道中に目の当たりにする

いくつものことなる命の形が

本作の副題である

"命をかけた伝令"の中に秘められていたと

考察できる。

命がけの伝令ではなく

命をかけた伝令。

 

彼が目の当たりにした

様々な命の形は

スクリーンを通じて

"命をかけた伝令"として

鑑賞者の元へ届くのである。

 

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1917 命をかけた伝令

1917 命をかけた伝令

 

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アメリカン・ビューティー
「007 スカイフォール」の
サムメンデス脚本&監督最新作。
第一次世界大戦下のイギリスにおいて
最前線の戦地へと
伝令を伝えるという指令を課せられた
2人の兵士の一日を
全編ワンカット風撮影で描き出す事で
緊張感と臨場感溢れる戦場を
まるで実際に駆け抜けるかのような
リアルな息づく"体験型"戦争映画
という新たなジャンルに挑戦している。
【story】
1917年。
第一次世界大戦下のイギリス。
独軍と連合国軍が西部戦線
睨み合いを続け、
戦闘が長期化する中、
イギリス軍兵士のスコフィールドと
ブレイクは
撤退にみせかけた
罠を展開している独軍を追撃中の
マッケンジー大佐の部隊に
自軍の撤退と作戦の中止を命じる
マッケンジー大佐の軍1600人の
命がかかった
"伝令"を届けて欲しいという
指令を課せられる。
マッケンジー大佐の軍が駐屯している
南東2キロ先のクロワジルの森へ
向かうべく
たった2人の伝令兵は命をかけて、
独軍の占領地を抜け、
苛烈を極める
戦場の最前線へと向かう...
【review】
アカデミー賞作品賞
惜しくも逃した本作。
日本でも公開前から話題を呼んでいた
本作がついに日本に上陸。
全編ワンカット風で構成された
とある指令を課せられた兵士の一日を
描き出す本作はまさしく
戦場を"追体験"するもの。
アトラクションと呼んでしまえば
少し語弊を生むかもしれないが
鑑賞者はこの作品を通じて
たった2人の兵士と共に
戦場に放り出され、
有無をいう間もなく
敵からの弾丸の雨、
ブービートラップの嵐に
晒される事となる。
いつどこから狙撃されるか
いつどこになにが仕掛けらているか
いつどこで誰と出会すか。
一寸先は闇の極限の緊張感の中で
息づく戦場を追体験し、
彼ら2人と共に駆け抜ける事となる。
演劇で活躍していた
サムメンデス監督ならでは
時間経過をリアルに演出する
ワンカット風撮影は
彼ら兵士2人と時間感覚すらも
共有してしまうため、
リアルな疲労感、緊張感を
より鮮明に彼らと同じように
体感することができる。
カットがない分、
場面転換がないため
次から次へと危機が迫る感覚を
彼らと共有することになる。
ハクソー・リッジ
プライベートライアンで得た
あの体感ともまた異なる
まさにスクリーンの壁を廃した
戦場が目の前を覆い尽くす。
この作品を鑑賞している2時間、
まさにあなたやボクは
独軍の占領地と最前線を駆け抜ける
イギリスの伝令兵そのものである。
彼らが目にするもの、体験するものは
全て、
どんな醜い、残酷なものであっても
ボクやあなたの目に飛び込んでくる。
しかしこの作品がボクらに
追体験させるのは
戦場の苛烈さだけではない。
当たり前が当たり前ではない
戦場の中では
普段はその美しさに気づかない
ささいな命達が
より美しく、強く輝く。
作品の中で印象的に映る命の形。
道中で出会う生まれたばかりの
赤ん坊、
スコフィールドが流れついた川に
散らばる花びら、
砲弾飛び交う最前線に咲く白い花達は
苛烈な戦場の中で
強くその美しさを増す。
すぐそこに水に浮かんだ兵士の亡骸が、
すぐそこに砲弾で体が吹き飛び
泣き叫ぶ兵士がいるのに。
息づく戦場の中にある
苛烈さ、醜さ、美しさ、微かな希望。
全てのリアルと
命の形を彼らと共に体感し、
命をかけた伝令を
命をかけて最前線へと届けにゆく。
主演、助演男優賞とはならなかったが
伝令兵を演じた2人の繊細な演技力もまた
この作品の緊迫感と悲哀をより助長している。
2人の演技にも要注意して鑑賞してほしい。
サムメンデス監督の
真髄を見た気がした。
パラサイトでもりあがる映画界ですが
この映画もぜひ
チェックしてみてください。
非常に苦しい作品であり、
心臓に決してよくない演出があります。
体調を万全に整えてから
鑑賞してください。
この作品は
強く強くおすすめします。
【評価】
ストーリー☆☆☆☆
演出☆☆☆☆☆
映像・迫力☆☆☆☆☆
上映時間☆☆☆☆☆
BGM☆☆☆☆☆
総合☆☆☆☆☆(満点)/5
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